受賞のことば

八束 澄子

 「このコーナーに原稿を」といわれて、ひたすらとまどっています。まず最初に訂正させていただきたいのですが、これは受賞ではなくただの選定です。
 そもそも恥ずかしながら、『ホワイト・レイブンズ』の存在さえ知りませんでした。突然の出版社からの知らせに、いくつものクエスチョンマークが頭の中を飛び交ったものです。そんな私をしり目に一番に反応したのが家人でした。「現地へ行って、自分の目で確かめたらええやんか』といって、あれよあれよという間にチケットの手配を済ませてしまいました。春にボローニャで開催されるブックフェアに出展されると聞き及んだからです。
 すると長男夫婦までが、「じゃあ、ぼくらも」とちゃっかり便乗し、いつの間にか家族旅行の様相を呈してきました。・・・なんだかなあ、これでは私はまるで出汁じゃないか。
 それでも時間が経過するうちに、じょじょに喜びが沸き上がってきたのも事実です。なんだかよくわからないけれど、なんだかうれしいというのが、今の私の偽らざる心境です。「国際推薦」という言葉だけで、広い世界にぽーんと連れだされたような胸ふくらむ思いがします。
 あと何年書けるかわからないけれど、頑張って書き続けていればいつかは、愛してやまないキャサリン・パターソンやC・アドラーの作品に近づけるかなあと、まさに希望を与えてもらった今回の出来事でした。
 よしっ。老骨に鞭打って、もう少し頑張るぞ!

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