この度いただいたのは、新人賞ということで、「まだまだこれからだから、しっかり励みなさい」ということだと思います。昨年に初めて出版された童謡詩集や楽譜集、CDやネット関係やメディア関連などが、対象となるそうです。わたしは、ずっと童話や物語、少年詩などを書いていましたが、童謡詩人の佐藤雅子先生が「ほら、よければこちらへいらっしゃい」とお声かけ下さって、童謡詩の世界に関わらせていただくようになりました。
わたしの両親は、兵庫県の山間部で小さな診療所を開いていて、医師と看護師として昼夜問わず忙しく働いていました。姉たちが学校に行くと、わたしは一人で本を読んだりレコードで童謡曲を聴いて過ごしました。
あの頃のさびしさや、それをうめるかのように本やレコードを、そばに置いてくれた親の愛のあたたかさ。その中に見出した光が、創作に関わる今のわたしを育ててくれたように思います。
ところで、数年前に東京の表参道で開かれた、画家のしんやゆう子さんの個展にうかがいました。そこで見た一枚の絵が、我が家の金木犀の木から青空へと巣立っていった庭の小鳩のようすと、ぴたりと合わさりました。その絵に導かれ、やがて「あしたの木」が生まれました。
作曲家さんが、童謡祭で演奏された曲を、ユーチューブにアップして下さることがあります。それを視聴した車椅子のお子さんが、思わず立ち上がりそうになって歌ったり、他のお子さんも笑顔になったりしてよろこんでもらえたと知りました。
また、晩年の母の寄り添いをしていた頃に、なつかしい童謡曲をCDで聞くと、母は顔をほころばせて、手で拍子をとって一緒に歌っていました。童謡の持つ力を実感しました。
わたしがつくった小さな詩に目をとめて曲をつけていただく作曲家さん。そして、童謡祭のコンサートで歌って下さる歌手さんやピアニストさん。また舞台を準備して下さったり、聞きにいらしてくださる方々があってこそ、詩に命を吹きこむことができます。
関わって下さる方々に、感謝申し上げます。これからも、未来を生きる子どもたちを思い描いて、日本独自の文化である童謡詩を書き続けます。
わたしは目の病気で、十数年前より、視野が半分程欠けています。けれど、いつも光が当たって見えている方に、心のまなざしを向けて、わくわくしながら、きらめきを見つめています。生きることの哀しみや切なさも内包しつつ、あたたかさや希望や楽しさを表現してまいります。ありがとうございました。