受賞のことば

高村 有

 世の中にはたくさんの面白い物語がありますが、自分が本当に求めている物語にはまだ出会っていないような気がしていて、どうにかしてそれに出会いたいという一心で書いています。
「自分の求めている物語」というものが、すごく抽象的なのですが……自分が子どものときに見た風景や心象の中にあるように思い、児童文学を書き始めました。子どもの頃、自分の見えている世界は、すごく謎と不思議にあふれていて、なんだか面白くてワクワクするな、と感じていたのです。それは、当時読んでいた児童書のファンタジーの世界と現実世界がごちゃまぜになっていたからかもしれません。
 今また、その頃の感覚を味わいたくて、「原点回帰で、地元を舞台にした物語を書こう!」と思い立ったのが今作です。
 私が生まれ育ったのは、長野県東部の、中山道沿いの宿場町。小学校の真向かいに城跡公園や神社があったり、町中にちょこちょこと古い屋敷や蔵が残されていたりして、子ども心に非日常的なものを感じてドキドキしていました。
「どういう人たちがここで暮らしているんだろう?」
 古い家や気になる建物をのぞき見るのが大好きで、そんな気持ちを思い出しながら、この作品を書きあげました。
 今までの受賞作の感性や雰囲気が好きで憧れていた「フレーベル館ものがたり新人賞」に応募したところ、まさかの優秀賞を受賞!
 ありがたく、うれしく、驚きもしました。選考委員の先生方からの選評にも、ただただ感謝です。
 いただいた選評どおり、舞台となる屋敷の物語をはじめ、まだまだ足りない部分がたくさんあります。もっとしっかりと取材し、物語を深めていかなければ……。
 粘り強く改稿し、完成度を高めていきたいです!

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