受賞のことば

おおぎやなぎ ちか

『疱瘡神』というタイトルで、「季節風」に投稿したのが、この『オオカミのお札』一巻の冒頭部分。その後三編連作にしたものを大会の物語分科会に出し、二巻部分を大会推薦作にしていただきました。
 その時点で百枚程度だったものを、その後加筆。およそ三百枚になり、一冊にもなる分量だけれども、三冊にしましょうということで、くもん出版さんから本になりました。
 この間の改稿加筆においては、分科会出席者の皆さん、編集者さんのご意見を伺いつつ、見定めていったわけですが、やはり三巻に東日本大震災を加えたことが大きかったと思います。あの震災を書くか書かないか、書くならどう書くかは、物書きにとってはその姿勢を問われる部分だと思います。私はあの日、岩手にいたということもあり、なおさらでした。
 人の心はもろく、つまらない、取るに足らないことで乱れます。でも、心の持ちようで、強く生きていくこともできます。「季節風」の世の中に媚びない姿こそ学ぶべきところだとも感じています。また、自分が書いたこの物語が、どうあるべきかを教えてもくれました。受賞は大変な励みになりましたが、「書く」姿勢に変わりはありません。「書く」ことでしか乗り越えられない、書いていこうと思っています。

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