受賞のことば

にこにこ。

 対面での初めての授賞式当日、緊張の中、高橋秀雄さんから「『受賞のことば』を書いて下さい」と、思いもよらぬお言葉をいただき驚きました。佳作なのにいいのだろうかと恐縮しながらも、こんな機会はもう二度とないかもしれないと有難く、このような場を設けさせていただいたこと、感謝いたします。
 思うに、童話作家になりたいと思ったのは中学の頃でしたが、そう思ったのも突飛な話で、取り柄のない私が作文を褒められたことに喜び、本嫌いで読書などしたこともなかった私が、転校して来た友人の本好きに感化され、本を好きになってからの始まりです。あの頃はただ自分勝手に書き綴っては公募に応募し、その度に落選。心折れかかっているところに、就職、結婚、出産と続き、創作から遠のいておりました。ところが、子供達の小学校で行われていた読み聞かせボランティア活動に参加するうちに、日に日に童話作家の夢が蘇り、夫の反対を押し切って、三年の約束で通信講座を始めました。習えばすぐに入選するに違いないと思っていた私の、何という浅はかさ。時間を作っては書き、時に体調を崩しては「心配だからやめてほしい」と言われ、それでも我を通して書きましたが、全く駄目でした。ああ、もう三年経った、と思った頃には、「そんなにやりたいのなら応援する。ゆっくり頑張れ」という夫の一言。どれほど救われたか分かりません。それなのにスランプに陥り、全く書けなくなる有様。自分には不向きだ、やめた方がいいのではないか、そう何度も思いました。しかしながら可笑しな話で、気づけば書いています。もういっそのこと、このままでもいいか、と思っていた矢先の受賞でした。
 ご指導下さった先生方、不甲斐ない私を励まして下さる先生方、力をくれる創作仲間、私の「やりたい」の一言を受け入れてくれた夫と子供達、そして今まで出会った全ての人達に、この場をお借りして感謝いたします。
 もうすぐ八年になります。これからの道のりも長く険しいことは想像がつきますが、それ以上に書くことはワクワクしますし、好きなお話だと言われると嬉しくなります。どんなお話でも、読者の心が「明るく、楽しく、前向きになれる」そこを目指して、これからも書き続けていきたいです。
 本当に、ありがとうございました。

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