『なみきビブリオバトル・ストーリー 本と4人の深呼吸』(さ・え・ら書房)の誕生のきっかけは、ある方の初出版のお祝い会でした。赤羽じゅんこさんが、たまたま同じテーブルに座った松本聰美さん、おおぎやなぎちかさん、そして私に「ねえ、ビブリオバトルの本、書かない? このわたしたちで」とおっしゃったのでした。ビブリオバトルというのは、ある種のゲームです。自分が薦めたい本について五分間で語り、聞いた方が「最も読みたいと思う本」に投票するというものです。
「やるやる」「書く!」と、その場にいらしたさ・え・ら書房の社長さんのところに売りこみに行きました。しかし社長さんは、「読んでみないと返事はできないねえ……」とおっしゃいます。今は本当に本の売れない時代です。社長さんといえども即答はできないというご事情がよくわかりました。
そこで、だめでも書いてみるしかないと、数週間後、四人で赤羽さん宅に集まりました。そして物語の構成や、登場人物の性別、名前、性格、家庭環境、そして物語中のビブリオバトルで紹介する本を決めました。背景事情が食いちがわないように、舞台となる図書館の見取り図や、校区の地図まで描いたのです。
四人はそれぞれに世界観のある独立した作家です。好みもちがえば、書きたくないものもあります。しかし、四人で一冊の本を作りあげるとなれば、同じタイプの子がかさなっては、おもしろくありません。「じゃあ、私その子やるわ」などと言って、一人ずつを分担しました。担当の登場人物になりきって、実際にビブリオバトルをやったりもしました。
期限を決めて、リレー式に物語を書いてゆきました。予定より早く物語が集まり、さ・え・ら書房さんに見ていただきました。結果は……GOサインでした。その後も紆余曲折ありましたが、出版後珍しい本ということで、図書館の司書さんを中心に注目していただけました。
そして、今回の受賞です。一人で書くのと違う苦労はあったが、仲間といっしょの受賞は何倍もうれしいねえというのが、みんなの感想です。なにより、本を読むという行為がビブリオバトルを通じて、子どもたちの間にもっと広まってほしい、という願いが、四人の中に共通してあったからだと思います。(文責・森川)