受賞のことば

森川 成美

 小峰書店の編集者さんと初めて話をしたのは、いとうみくさんの授賞式の日でした。季節風の仲間といっしょに二次会に行き、酔った勢いで「そのうち作品を持っていくから見てください」などと言いました。そうしたら、とりあえず出してみようというような生半可な気持ちでは困る。こちらも断るには、それなりのエネルギーが必要なのだから、と言われたと思います。
 それで勇気が出ずに、なにもお送りしないまま三年ぐらい過ぎました。しかし、日本にもミサイルが飛来したときに、前から書きかけていたけれど進まなかったハワイの話を、別の角度から書く気になり、直後、どこかの授賞式で再度お目にかかった際に「近々、送らせてもらいます」と宣言しました。もうあとには引けないので、猛然と書きました。
 資料はそろっていましたし、頭の中も整理されていたので、割と早く書けて、原稿を送りました。そうしたら、ちょっとだけ読むつもりが、ついつい最後まで読んでしまった、出版したいと、すぐにお返事をいただいたので、びっくりしました。
 その後、何度も鉛筆が入るうちに、自分の目で確かめたい点が出てきました。前に書いていたとき、ハワイに調べに行ったことはあったのですが、その時とは知りたいことの質が変わっています。それで一念発起して再び行きました。いまさら変えられないような部分が相違していたらいやだなあと思っていましたが、だいじょうぶだったので、ほっとしました。確かめたおかげで、全体にリアリティが増した、と編集者さんに言ってもらえました。
 昔の話、外国の話、しかも戦争の話なので、受けいれられるだろうかと心配していましたが、出版後、新しい視点の戦争児童文学というような感想をあちこちからいただいて、これまたほっとしました。受賞によって、それを承認していただけたような気持ちがしています。

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