ありがたいことに、こちらを書かせていただくのは四回目になりますが、今回の受賞の言葉は、ずいぶん悩みました。
この作品を書く前、「私はもう二度と小説を書けない」と思った時期がありました。書き始めた時には、「それでもやっぱり書いてしまうのか……」という諦念のような悲しみさえありましたが、書き上げた当時から、私はこの作品が大好きでした。大きな達成感を与えてくれた作品で、「これは必ず届く」というような、傲慢で、根拠のない自信( 手応え) もありました。
それからブラッシュアップを重ね、初稿ができてから受賞する形になるのに丸三年を要しましたが、あの当時の手応えは確かなものだった、と、振りかえると思います。
書くことでより打ちのめされながら、「こんな作品はやっぱりできないんじゃないだろうか」と何度も思いながら、なぜ書いたのか、今でもよく分かりません。
ただ、「自分たちを書いて」と、主人公たちに呼ばれた感覚がしたことを覚えています。その後、向き合い続けること数年。周囲に止められることもありました。それでも、自分が納得できる所までやりきらねば、つかえがとれず、次に進めない気持ちでした。それは私にとって書かざるを得ない作品であり、投げださないで頑張らなければ、主人公たちに顔向けできない。この物語の中で生きる子に対しての、創った覚悟、伴走すると決めた責任でした。
執筆中は悩むことも少なくなかったけれど、それでも、自分に正直であり続けたこと、流されずに彼らを守ったことに、後悔はありません。受賞できたことを、本当に誇らしく思います。
小説を書くのが楽しくてたまらない、という人もいるけれど、私はそういうタイプではありません。書くことは大変で、苦しくて億劫なのにどうしてか、書かずにいられない。
今まで、優秀賞、佳作、大賞と受賞することができて、「次はもう出版する賞しかない」と思っていたけれど、四回目の受賞が、「出版を検討する」受賞というのは、一歩一歩でしか進んでこられなかった私らしいのかもしれません。
最終選考落選歴は八回になり、本を出すということはなんて難しいのか、と、道のりの厳しさに落ち込むこともあります。でも、残す「出版する受賞」を目指して、引き続き、腐らず、たゆまず頑張ります。
選考に携わってくださった全ての皆様に心よりお礼申し上げます。本当にありがとうございました。