受賞のことば

みずの 瑞紀

 家族から、他人から。私はよく「冷静で気丈な人」と言われます(楽しんでいる時のテンションが高いので、あまりそういう印象は持たれないのですが)。
 非日常的な緊張を強いられる場面も一人でしれっと対応してしまったり、もっと感情的だったらよかったのにな、と思うこともあります。
 そんな自分が、小説で最初に緊張を強いられた出来事は、十代の時に作品を発表していた、ポプラ社のサイトを通じていただいた、日本経済新聞の取材でした。
 綿矢りささん、金原ひとみさんが芥川賞を受賞した年にいただいた夢のようなお話で、「若い才能に注目し取材している」とのことでした。前日までとにかく緊張していたけれど、担当記者さんは年が近くて、リラックスして数時間話し込み、私のことを、当時遠い憧れでしかなかった、「金原ひとみさんみたいですね」と言ってくださって。記者さんの言葉に舞い上がった思い出です。結果的に記事にはならなかったけれど良い経験となり、「いつか新聞に載りたいな」と強く思うようになりました。
 千葉文学三賞には、過去二度最終選考まで残り、三度目で千葉児童文学賞を受賞することができました。
 大賞受賞、授賞式、賞状、盾、賞金、新聞掲載。十年以上ずっと憧れていたはずなのに、思ったほど舞い上がることはなく。
 そのすべてより、何よりも嬉しかったのは、担当記者さんが「あなたの応募作品を自分は何年も読んでいて、覚えていた」と言ってくださったことでした。
 小説は、自分の努力を認めてもらう為のものではありません。私がどれだけ応募して落選していようと、読者には一ミリも関係がないことです。
 それでも、書き続けている自分をずっと見ていてくれる人がいる、ということ。その瞬間に触れられること。それが幸せです。
 受賞作、『空色のポートレート』は、2019年の季節風大会、ナンセンス・ファンタジー分科会に提出した作品のリライト版です。参加してよかった。改めてそう思います。
 本当にありがとうございました。

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