受賞のことば

みとみ とみ

 ちょうど一年前、日本児童文学者協会の創作教室に通っていた私はふと、YAというものを書いてみたくなりました。しかも主要人物が男の人だけの物語です。そして、ひと月ほどで一気に書き上げたのが、今回の受賞作『晴れ ときどき コモリ』です。
 不登校の男子中学生が、ひょんなことで自分の家庭教師として家にやってくることになったブサイクでそれほど優秀でもない男子大学生と触れ合ううちに、少しずつ変わっていく……。そういう物語を書いたつもりですが、実際はどれだけ私の意図通りに書けたかわかりません。たぶん、まだまだ未熟な作品だと思います。それなのに無謀にも〈ちゅうでん児童文学賞〉に応募したのは、単にグレードと枚数が応募規定に合っていたからでした。
 それが、今回、幸運にも奨励賞をいただけることになり、本当に驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。
 ニーチェのことばに共感し、不器用だけど一生懸命で、失敗ばかりだけど決して諦めず、この世の中で信じられるものがあるとすればそれは自分の中の情熱だけ、と作中で熱く語る男子大学生八田正敏くんこそ、間違いなく私の分身です。
 これからも自分の中の〈物語を書きたい〉という情熱を信じ育てながら、より多くの読者に喜んでもらえるような物語を書いていきたいと思っています。

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