「出してみようかなあ」
ふっと、思った。
初めてだった。
きっと魔がさしたのだと思う。だから、それっきり忘れていた。
生きていると、予測もしないことって本当にあるのだ。
「宇都宮に行きたいんだけど」「良いよ。餃子でも食べに行くのか?」
笑いながら、私が出した受賞の通知を見た夫は言った。
「おお、こんなことになったのか。今まで、おまえの趣味になんの興味も持たないで悪かったな」彼流の誉め方だった。
応募も結果もだれにも言わなかったけれど、一か月を過ぎて、季節風の仲間が突然電話をくれた。「なんで言わないのよ!」「だってえ……」
受賞を初めて嬉しいと思った。誰かが気にしてくれたことが嬉しかった。仲間とは有り難いものだと思った。
今回の受賞は、「このまま書いていて良いんだよ」と私の背中を押してくれた。
ゆっくり書いていこうと思う。