受賞のことば

いとう みく

 突然スマホが壊れて途方に暮れていました。どうやっても復活せず、ああ、写真もメモもラインも全部消えてしまった……。っていうより息子のケータイ番号ってどこかにメモしてたっけ? いや、そのメモもスマホのなかじゃん!
 ほめられたことではありませんが、IDやパスワードも、とにかくあらゆる情報がスマホの中にあり、手も足も出ない状況でした。
 ケータイショップも予約制ですぐには対応してもらえず、半日以上、仕事も手につかず、どよーんと落ち込んでいました。
 結果的に、バックアップされているどこからか、おおよそのデータを復元することができて安堵したのですが。 そんなしょうもないことに、千々に心乱れた翌日、今度は思いがけない連絡が入りました。河合隼雄物語賞受賞の知らせでした。
 河合隼雄物語賞は、児童書を対象にした賞ではないこともあってピンとこず、受賞? なんの賞? とクエスチョンが飛び交っていました。ようやく頭の中のピントが合ったとき、嬉しい驚きにかわりました。
『あしたの幸福』は、幸せの価値観を疑い、手探りでわたしの幸せをつかもうとする少女とそれを紡ぐ奇妙な家族の物語です。
 幸せの形も、家族の形も人の数だけある。あっていい――。
 わたしの心のどこかにあるそんな思いが、この物語につながったのではないかと思います。
 この度は本当にありがとうございました。

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