受賞のことば

いとう みく

 ごくごくありふれた姉妹のありふれた日常の物語です。
 つくしとかえでという姉妹の日常は、はたから見れば平凡で穏やかで、特別なことなんてないような毎日かもしれません。
 でも、日々の小さな出来事ひとつひとつに、小さな姉妹は、笑ったり、怒ったり、悲しくなったり、傷ついたり、喜んだりします。
『つくしちゃんとおねえちゃん』は、そんなふたりの心の機微を描いた物語です。
 二〇二〇年、新型コロナウイルス感染症パンデミック以降、わたしたちの日常は大きく変化しました。不安や苛立ち、焦り……さまざまな思いを抱えて日々を過ごしてきました。
 そんな日々を過ごしながら、いつのまにか、マスク生活が当たり前になり、オンラインを利用したコミュニケーションが日常化し、これまでの当たり前が崩れることによって掘り起こされ、問題が見えてきたり……。
 非日常が日常化していく。その流れを肌で感じて、人の強さのようなものを感じました。
 しかし、コロナ禍に始まったロシアによるウクライナ侵攻はべつです。ウクライナの人たちの生活は、あまりにも唐突に、あまりにも脆く崩され、奪われました。こんな生活が日常になってはいけない。
 いま、平穏な日常の尊さをあらためて感じています。
 世界のあちこちにいる、つくしちゃんとかえでちゃんが、笑顔でいられますように。そう祈らずにはいられません。

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