受賞のことば

いとう みく

「いとうさんって、家族をテーマにした作品が多いですね」と、ときどき、いや、よく言われます。言われてみて、そういえばそうだなと気づいたくらいで、意識をしたことはありません。でもあらためて考えてみると、人間関係で一番厄介なのは、家族なのではないか、と思いました。
 家族だから、親だから、子どもだから、きょうだいだから……。
 この、「だから」の意味も、人によってとらえ方は様々です。
 だから守りたい。だから突き放せない。だから甘えたい。だから背伸びをする。だから期待してしまう。だから愛されたい、だから許せない……。
 そんな家族の機微。
『あしたの幸福』は、父親を事故で亡くした中学二年生の雨音が、自分の居場所を守るために、赤ん坊のころに家を出て行った産みの母親と同居することを決めます。そこに父親の婚約者も転がり込んで来て、女三人の奇妙な同居生活が始まります。
 この受賞を機に(って、ずうずうしくてすみません)、ちょっとでもこの作品に興味を持っていただけたら嬉しいです。

トップにもどる