受賞のことば

いとう みく

 思ってもみない連絡でした。受話器の向こうから聞こえる、「おめでとうございます」ということばに、なにが? え、なんの連絡? とただ戸惑い、ようやくどうやら『空へ』が児文芸の協会賞に選ばれたようだ≠ニわかって、驚きました。
『空へ』は、数年前の秋の大会直後に書き始めた物語です。大会で、人を描くということとはどういうことなのか? ということを改めて突きつけられた思いがして、帰宅後すぐに、途中まで書き進めていた物語を全部消去しました。それまで書いていたものが、とても作り物に感じたのです。そして書き始めたのがこの作品です。最後の一章をのぞいてすべて季節風に投稿し、掲載していただきました。
 六つの物語を一つの物語として書き直すときに、くり返し読み直したのが、編集委員のみなさんが書いてくださった投稿作品評です。なにが足りていないのか、なにが余分なのか、なにが書けていないのか……。短いコメントのなかからときには励まされ、背中を押してもいただきました。
『空へ』は、季節風という場、そして仲間たちが書かせてくれた物語だと思っています。
 今回、大変すばらしい、うれしい賞を頂きました。わたしには大きすぎる賞だというのが正直なところではあるのですが、心から感謝申し上げます。
 だれを、なにを描きたいのか、書かずにいられないのか、もう一度自分自身に問い直しながら書いていきたいと思っています。本当にありがとうございました。
 このうれしい知らせが、空へも届いているといいな……。

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