受賞のことば

井嶋 敦子

 受賞の封書が届いたのは八月末の月曜でした。新型コロナ第七波、連日の発熱外来で疲弊していました。秋風が吹いて、ようやく平日の外来は落ちついてきていましたが、休み明けの月曜は相変わらず電話も診療も大混雑。疲れた〜と帰宅して郵便受けを見て、急ぎのものは処理し、日本児童ペンクラブの薄い封書を見つけました。入会のお誘いかなあとしばし放置して、夜中に開いたらなんと受賞のご連絡。えっ!と真っ白になった頭に浮かんだのは、四月に急逝された漆原智良先生の笑顔。「がんばって。期待していますよ」といつも勇気づけてくれた師匠でした。児童ペンクラブには漆原先生はじめ、お仲間が入会されています。前年の十一月にいち早く漆原先生に送付した拙書を気に留めてくださったにちがいありません。ほんとうに感謝です。
 この物語を書いていくなかで、自分自身が学んでいるなあと何度思ったことか。診察して指導するだけじゃなく、当事者の子どもの気持ちになってみることがどれほど大切なことか。病みつきになりそうでした。で、また発達障がいがらみの物語を性懲りもなく書いています。
 多くのお仲間のおかげでいただけた賞を励みに、私にしか書けないことを書き続けていきたいと思います。

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