受賞のことば

ふくだ のりこ

 今回、日本児童文学者協会北海道支部主催の「草原賞」で佳作入賞の封書を頂きました。封を開けて「えっ?」とびっくり。呆然としながらも母たちへ封書をお供えし報告しました。あのとき、なにかしら、人ごとのように思ったのを覚えています。でも……徐々に喜びがわいてきました。
 いちばん嬉しかったのは後藤竜二さんの故郷である北海道の賞を頂けたこと。季節風に入るきっかけも後藤さん。創作教室でお世話になりカフェで語らったことなど様々なことが思い出され、ほんの少しいい報告ができたかなと思いました。でも、たぶん後藤さんに言われるかな「ふくださん、まだまだだね」と。
 「彼岸花が咲いた」は二〇一三年に季節風の分科会に出しました。それから約十年。やはり、捨てがたくて何度も書き直し、削り、付け加え、ただ「書きたい」という思いが強く、締め切りぎりぎりに応募した作品です。
 鹿児島の実家の庭に、お彼岸の頃すっくと咲く彼岸花。小学四年生の健太郎と花の好きな祖父との物語です。きれいな花ではあるけれど「死に花」だと聞いた健太郎は病気の祖父に咲いたことを教えられない。でも、今までの祖父の生き様を見ていた健太郎は、思い切ってカーテンをあけ……。
 花が好きで季節の花を植えていた母、子どもたちを認めて褒めていた義父、今までのいろいろな出会いがこの物語を生みました。
 おりしも牧野記念庭園で牧野富太郎さんの「彼岸花」の絵を見つけ、授賞式で小津安二郎さんの映画「彼岸花」の話を聞き、神奈川近代文学館での「小津安二郎展」へ行きました。受賞が新しいご縁を作り、また作品が生まれそう。
 「草原賞」は名前も住所も伏せて選んだとの由。たまたま知人が審査員でしたがあけてみて「えっー」とびっくりされたそう。授賞式では北海道支部の皆さまの優しさにふれ、書くことへの情熱をとても感じました。今回あらためて自分の物語を子どもたちや多くの方に読んでもらいたいと切に思いました。

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