受賞のことば

千葉 朋代

 公募に出した時の私には、この作品が精一杯でした。しかし季節風大会の合評で、このままで本になる作品ではないと痛感し、次の目標に向けて書き直しをしていました。
 だから入選の知らせには、本当に驚きました。この賞は作品にではなく、作品の可能性に与えられたのだと思っています。出版にはもう少し時間がかかりますが、良い作品にしてお届けしたいと思います。
 賞を頂いたという実感は、あまり無いのです。まだ、物語を完成させていないからなのかもしれません。ただ、ここに至ることができた喜びは、しっかりとかみしめています。
 この物語は、自分の安全圏を越えて書きました。主人公に重荷を負わせる以上、作者も苦しんで書こうと覚悟を決めました。その覚悟をさせてくれたのは、物語と真剣に向き合い、悩み、もがきながら書く仲間の姿そのものです。「子どもに手渡す物語は、こうやって生みだすものだ」と肌で感じさせてくれたのが季節風です。
 5月の授賞式には、たくさんの仲間がお祝いに駆けつけてくださいました。素敵な花束も頂きありがとうございます。みなさんのお祝いの言葉の中に、喜んでくれる笑顔の中に、
「ようやく書いたな。ほら、俺が言った通りだろう」と笑っている後藤さんがいるような気がします。
 私も作品も、ここからがスタートです。物語分科会の皆さんが推薦作にして下さった作品です。いい作品になると、読んだ仲間が言ってくれた作品です。これからに生かす合評もしていただきました。だから自信を持って胸を張って、作品と一緒に歩んでいこうと思います。ひとりでは書き続けられない、そんな弱い自分が誇りです。

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